【就職・転職】クラレの将来性は?事業別業績から現在の状態と就職・転職判断を整理

クラレの将来性を考えるとき、将来の利益を予想する前に、会社がいまどのような状態にあるかを確認する必要があります。クラレは独自製品を複数持つ一方、2025年に収益性が低下し、2026年上期も事業ごとの利益状況に差がありました。本記事では、全社・事業別業績、競争力、設備投資、リスク、中期経営計画から2026年8月時点の現在地を整理し、就職・転職候補に残すか判断します。将来の利益や株価は予測しません。

目次

結論|クラレは製品競争力が強い一方、事業ごとの収益差が大きい

現在地:独自製品を複数持つ有力企業ですが、事業ごとの収益差が大きい状態です
  • 製品基盤:ポバール樹脂・フィルム、EVOH樹脂〈エバール〉、歯科材料、活性炭など、用途の異なる独自製品を持っています。
  • 全社業績:2026年上期は増収増益でしたが、営業利益率は約6.7%で、2024年通期の約10.3%を下回っています。
  • 事業構造:最大の利益源であるビニルアセテートは2026年上期に増収減益でした。機能材料、繊維、トレーディングは増益です。
  • 投資状況:歯科材料の新ラインは稼働済みですが、〈エバール〉、再生炭、光学用ポバールフィルムの大型設備は稼働前です。
現在確認できる強み

高シェアの独自素材を持ち、食品包装、電気・電子、モビリティ、医療、環境など複数市場へ事業を展開しています。

現在確認できる注意点

2025年に収益性が低下し、2026年上期も利益の柱が減益でした。大型投資の一部はまだ稼働前です。

公式発表で確認できること2026年上期は売上高4,310億円、営業利益288億円で前年同期を上回りました。通期売上予想は8,500億円から8,800億円へ上方修正されましたが、営業利益予想は700億円のままです。
数字から読み取れる現在地全社では前年同期を上回っていますが、最大事業は減益であり、収益性の改善は会社全体へ均一に広がっていません。製品競争力の強さと、足元の利益状況は分けて見る必要があります。

2023〜2025年と2026年上期から現在地を見る

まず、比較できる2023〜2025年12月期の通期実績をそろえます。2026年上期は半年間の数字なので、同じ表へ混ぜずに別枠で確認します。

年度売上高営業利益営業利益率判断材料
2023年7,809億円755億円約9.7%増収でも原燃料・需要影響で減益
2024年8,269億円851億円約10.3%売上・営業利益とも回復
2025年8,084億円589億円約7.3%減収に加え、営業利益は前年比約31%減

2025年は売上高が前年比約2%減だったのに対し、営業利益は約31%減りました。売上規模より利益の落ち込みが大きく、2024年までの収益性を維持できなかった状態です。

2026年上期は増収増益だが、収益性は2024年水準を下回る

期間売上高営業利益営業利益率位置づけ
2025年上期4,000億円263億円約6.6%前年同期の比較基準
2026年上期4,310億円288億円約6.7%増収増益だが利益率の改善は小幅
2026年通期予想8,800億円700億円約8.0%売上予想だけ上方修正、利益予想は据え置き
公式発表で確認できること2026年通期予想は2025年実績に対して増収増益です。一方、営業利益700億円は2024年実績851億円を下回ります。
数字から読み取れる現在地2026年上期は増収増益ですが、営業利益率は約6.7%で、前年同期の約6.6%からの改善は小幅です。2024年通期の約10.3%と比べると、現在は売上・利益額が増えても収益性が低い状態にあります。

5事業の利益構造|稼ぐ事業と改善途上の事業

クラレは事業ごとの利益差が大きい会社です。2023〜2025年は同じセグメント区分の通期実績を比較し、2026年上期は区分変更を反映した前年同期比較として分けます。

事業2023年
売上/利益
2024年
売上/利益
2025年
売上/利益
現在地
ビニルアセテート4,068/863億円4,149/876億円4,045/625億円利益の柱
規模は最大だが2025年に大幅減益
イソプレン657/▲109億円764/▲95億円804/▲49億円改善途上
売上拡大でも3年連続赤字
機能材料1,898/103億円2,080/129億円2,069/108億円堅調分野
歯科材料・活性炭が2026年上期に堅調
繊維619/18億円627/12億円607/26億円選別中
高機能用途へ資源を寄せる段階
トレーディング616/52億円676/59億円688/60億円安定
3年間で増収増益

単位は億円。売上高はセグメント間取引を含むセグメント売上高、利益はセグメント利益です。

2026年上期は同じ基準に組み替えた前年同期と比べる

比較上の注意:2026年から、エレクトロニクスマテリアルズ推進本部に属する事業が「その他」から「機能材料」へ移りました。2026年上期の前年同期比較には変更後の区分が反映されていますが、上の2023〜2025年通期表へそのまま足しません。
事業2025年上期
利益
2026年上期
売上高
2026年上期
利益
上期から分かること
ビニルアセテート299億円2,171億円254億円増収でも営業利益は15.0%減
イソプレン▲13億円459億円18億円黒字化。ただし減価償却費減少と在庫評価の影響を含む
機能材料17億円1,103億円49億円歯科材料・活性炭などが堅調
繊維▲1億円319億円42億円需要回復・価格改定・高機能品が寄与
トレーディング30億円373億円37億円増収増益を継続

ビニルアセテート:最大の利益源だが、製品ごとの差が大きい

ポバール樹脂・フィルム、PVBフィルム、特殊アイオノマーシート〈セントリグラス〉、EVOH樹脂〈エバール〉を含む最大事業です。2026年上期はポバール樹脂、光学用ポバールフィルム、〈エバール〉の販売数量が増えました。

一方、PVBフィルムは欧州・アジアで競争が厳しく、〈セントリグラス〉は顧客プロジェクト延期、水溶性ポバールフィルムは個包装洗剤の需要低迷が影響しました。事業全体が強いかではなく、どの製品が利益を支えているかを見ます。

イソプレン:黒字化したが、会計要因を含む

2026年上期は18億円の営業利益となり、前年同期の赤字から改善しました。〈ジェネスタ〉は電気・電子と自動車用途で販売数量が増えています。

ただし、黒字化には2025年の減損に伴う減価償却費の減少や在庫評価差額のプラス影響も含まれます。中国の建築需要は弱く、エラストマーの競争も続いているため、公開数字だけでは通常の販売活動による収益性を切り分けられません。

機能材料:歯科材料と活性炭が堅調

2026年上期は審美治療用歯科材料が欧米を中心に堅調で、活性炭も需要増と価格改定が寄与しました。メタアクリルでは生産能力の縮小が利益面でプラスに働いています。

機能材料の2026年上期利益は、区分変更後の前年同期17億円から49億円へ増えました。ただし、製品別の利益額は開示されていないため、歯科材料、活性炭、メタアクリルがそれぞれどこまで利益を支えたかは公開情報から切り分けられません。

数字から読み取れる現在地利益の中心はビニルアセテートですが、2026年上期は同事業が減益でした。機能材料、繊維、トレーディングは増益で、イソプレンは黒字化しています。ただし、イソプレンの黒字には減価償却費の減少と在庫評価差額が含まれるため、事業ごとに収益の安定度が異なる状態です。

クラレの競争力|高シェア製品が多い一方、利益の安定性には差がある

クラレレポート2026によると、世界シェアNo.1製品の売上高比率は2025年に63%です。ただし、これはクラレ調べであり、高シェア製品が毎年同じ利益を生むことを保証する数字ではありません。

原料から製品までの一貫生産

ポバール関連では、原料モノマーから製品までの技術と生産をつなげ、品質・供給・用途開発を組み合わせています。

用途の異なる製品群

食品包装、ディスプレイ、自動車、電気・電子、歯科、水処理など、異なる最終市場へ製品を供給しています。

グローバル供給と顧客基盤

日本・欧米・アジアの生産販売網は、地域ごとの需要を取り込む強みになります。

技術サービスと用途開発

素材を販売するだけでなく、顧客用途へ合わせる技術提案が採用継続や新規用途につながります。

競争基盤現在確認できる強み現在確認できる限界
世界シェア上位の独自製品世界シェアNo.1製品の売上高比率は63%高シェア製品を持つビニルアセテートでも上期は減益
複数市場への展開包装、ディスプレイ、自動車、電気・電子、歯科、水処理へ展開利益はビニルアセテートへの依存が大きい
グローバル供給網日本、欧州、米州、アジアに生産・販売網を持つ原燃料、物流、為替、地政学の影響も受ける
顧客との用途開発素材と技術サービスを組み合わせて顧客用途へ対応〈セントリグラス〉では顧客プロジェクトの延期が発生
事業資料から読み取れる現在地高シェア製品、一貫生産、グローバル供給、顧客との用途開発は、クラレの競争基盤になっています。一方、2026年上期のビニルアセテートは増収減益でした。現在は製品ポジションの強さがあるものの、すべての事業で安定した利益につながっている状態ではありません。

成長投資の現在地|稼働済みと計画段階を分ける

設備投資は、発表・建設・稼働・販売拡大のどの段階にあるかで意味が異なります。2026年8月時点で実際に動いている施策と、まだ稼働前の計画を分けます。

事業・投資2026年8月時点現在の段階現状から分かること
〈エバール〉
シンガポール新工場
2026年末の完工予定稼働前建設段階であり、売上・利益への寄与はまだ確認できない
歯科材料
三好工場の新ライン
2026年第2四半期に稼働開始稼働開始供給能力は増えたが、新ライン単独の売上・利益は開示されていない
米国の再生炭設備増設決定、2028年第1四半期の稼働予定稼働前投資計画の実行段階であり、現時点の利益には寄与していない
光学用ポバールフィルム
西条事業所
増設決定、2027年12月の稼働予定稼働前高シェア製品への増設投資だが、追加能力はまだ利用できない
〈ジェネスタ〉の拡販2026年上期に電気・電子、自動車用途で数量増販売拡大数量増は確認できるが、製品単独の利益額は開示されていない
公開情報から確認できる現在地5項目のうち、歯科材料は設備が稼働し、〈ジェネスタ〉は販売数量が増えています。一方、〈エバール〉、再生炭、光学用ポバールフィルムの設備は稼働前です。現在のクラレには、実績が表れ始めた施策と、計画段階の投資が混在しています。

中期経営計画の達成状況|売上規模に利益とROICが追いついていない

中期経営計画「PASSION 2026」は2022〜2026年度の5カ年計画です。2026年8月時点では、売上規模は当初計画を上回る一方、利益と資本効率は当初目標を下回る会社予想です。

指標2025年実績2026年年初予想当初の2026年計画読み方
売上高8,084億円8,500億円7,500億円規模は当初計画を上回る
営業利益589億円700億円1,000億円利益目標との開きが大きい
ROIC5.1%6%8%当初の投資効率目標を下回る
EBITDA1,436億円1,550億円1,700億円当初計画を下回る
EBITDAマージン17.8%18%23%売上規模に対する収益性が当初計画を下回る

2026年8月7日に通期売上予想は8,800億円へ修正されましたが、営業利益予想700億円は据え置かれました。ROICなどの年初予想はクラレレポート2026の公表値です。

事業ポートフォリオの入れ替えは進んでいる

クラレは、社会・環境価値、経済的価値、市場成長性に「ベストオーナー」の観点を加えて事業を評価しています。実際に、メタアクリルの生産能力最適化、繊維事業の製品選別、イソプレン関連の減損、歯科材料・活性炭・〈エバール〉への投資を進めています。

ただし、事業を整理した事実と、会社全体の収益性が改善した事実は別です。2026年8月時点では、事業の入れ替えを進めている一方、営業利益とROICは当初計画を下回る状態です。

次の長期ビジョンは確定内容として扱わない

クラレレポート2026では、2026年に次代へ向けた長期ビジョンの議論を進めていると説明しています。確認資料の範囲では、新しい計画の最終内容はまだ確定していないため、現在の会社状態を判断する根拠には含めません。

計画との比較で分かる現在地PASSION 2026では売上規模が当初計画を上回る一方、営業利益、ROIC、EBITDA、EBITDAマージンは当初計画を下回っています。現在は事業拡大と再編を進めていますが、利益と資本効率の目標達成には至っていません。

クラレの将来性評価|製品競争力は強いが、収益の安定性には注意が必要

ここまでの公式情報を、2026年8月時点の評価として整理します。次の評価は公開情報に基づく当サイトの見解であり、将来の業績を断定するものではありません。

評価軸現時点の評価判断根拠
製品競争力強みとみる世界シェアNo.1製品の売上高比率は63%。一貫生産や用途開発を含む独自性がある
足元の収益性注意2025年の営業利益率は7.3%、2026年上期は約6.7%。最大事業も上期減益
事業分散差がある機能材料、繊維、トレーディングは増益だが、ビニルアセテートへの利益依存が大きい
成長投資途中歯科材料は新ラインが稼働済み。一方、〈エバール〉、再生炭、光学用ポバールフィルムは稼働前
中計の達成状況未達あり売上規模は当初計画を上回るが、営業利益、ROIC、EBITDA関連指標は当初計画を下回る
当サイトの見解現時点では、製品競争力を重視する人は候補に残し、収益の安定性を最優先する人は他社と比較するのが妥当だと考えます。
高シェア製品と複数市場への展開は、候補に残す根拠になります。一方、最大事業の減益、中計に残る利益・ROICの未達、稼働前の大型投資は注意が必要です。

会社の現在地を就職・転職の判断へ置き換える

製品競争力が強くても、自分が希望する仕事や配属先まで自動的に良いとは限りません。ここでは、現在の事業状態から確認できる会社側の課題を、応募前に確かめたい項目へ置き換えます。

事業の状態会社側の主な課題働く人への高水準の影響候補判断で確認すること
成長・増設新設備の立ち上げ、量産、顧客採用開発から量産、品質、顧客対応まで連携が増えるどの製品・工程・拠点に関わる可能性があるか
利益の柱供給安定、品質、コスト、用途拡大改善と安定運転の比重が高くなる新規開発と既存工程改善のどちらを望むか
改善・再構築製品選別、固定費削減、高付加価値化課題解決の余地が大きい一方、事業変更の影響も受ける変化の大きさを経験機会として許容できるか
理系新卒が次に確かめること

専攻と希望職種が、クラレのどの製品・工程・拠点へつながるかを確認します。この記事では応募職種や配属までは決めません。

メーカー転職者が次に確かめること

現在の求人、担当製品、工程、必要経験、勤務地を確認します。公開されていない求人や配属を、将来性分析から推測しません。

ここでの判断範囲:成長事業に関わりたいか、利益改善の仕事も許容できるかという大枠までです。専攻・経験・勤務地との適合は、公式採用情報や対象別の企業比較で確かめてください。

最終判断|候補に残す・比べる・外す・ここで終える

最後に、クラレを候補としてどう扱うかを一つ選びます。すべてのリンクを開く必要はありません。今の自分に残った疑問に合うものだけ確認してください。

候補に残す

独自製品と複数市場への展開を評価し、事業ごとの収益差や稼働前の大型投資がある現在の状態も許容できる人です。

  • 利益の柱であるビニルアセテートが上期減益だった点を理解する
  • 稼働済みの施策と計画段階の投資を分けて考える

新卒・転職のうち、自分に該当する一つだけを確認します。

クラレの技術系職種を公式情報で確認するクラレのキャリア採用情報を確認する

他社と比べる

クラレの強みは理解できたものの、利益の安定性、事業の将来性、自分との適合のどれかを他社と比べたい人です。

理系新卒

クラレを志望企業に決めたものの、研究内容の伝え方、志望理由、ES・面接の準備の仕方がわからない人向けです。

求人・自己分析・ESから準備方法を一つ選ぶ
メーカー転職

クラレを転職候補に決めたものの、経験に合う求人、募集背景、仕事内容、配属条件、応募準備のどれかが不足している人向けです。

求人・経験・条件から確認方法を一つ選ぶ

クラレに入社したら、最初にどんな仕事をするのか知りたい学生へ

クラレの将来性が分かっても、入社後にどの部署で何を担当するかまでは見えてきません。事業や拠点が多い企業ほど、配属先によって仕事内容や身につく経験が変わります。

ビズリーチ・キャンパスは、先輩の所属企業・職種・経歴を見て、話を聞きたい相手を探せる大学別のOB・OG訪問サービスです。若手の仕事や配属後の経験を聞けば、自分が働く姿を想像しやすくなります。

プロフィールから選べる所属企業・職種・経歴を見て、話を聞きたい先輩を探せます。
オンラインでも話せる遠方の企業や拠点について確認したい場合にも利用できます。
仕事を具体的にできる採用ページだけでは見えにくい、若手の仕事や配属後の経験を聞けます。

開校大学は公式サイトで確認できます。希望する企業・職種の先輩が登録されているか、訪問依頼が承諾されるかは、企業・職種・時期によって変わります。

公式情報の確認日:2026年8月27日。構成更新日:2026年8月28日。金額は原則として億円単位に丸めています。2026年の数値には会社予想が含まれ、実際の業績を保証するものではありません。当サイトの見解は、公式発表の事実と区別して記載しています。

主な公式資料:クラレ「2023年12月期 決算短信」「2024年12月期 決算短信」「2025年12月期 決算短信」「2026年12月期 第2四半期決算短信」「クラレレポート2026」「世界シェアNo.1製品」「ビジョン実現へのロードマップ」「事業ポートフォリオの高度化」「セグメント別戦略」「事業等のリスク」「2025年の減損損失」「光学用ポバールフィルム生産設備の増設」「米国再生炭生産設備の増設」。

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