富士フイルムは、写真関連だけでなく、医療機器、バイオ医薬品の製造受託、半導体材料、複合機まで扱う会社です。事業ごとの利益と大型投資、再編方針を確認し、応募を検討するか、他社と比べるかを決めます。
結論|半導体材料とイメージングが強く、バイオCDMOと事業再編が確認点
富士フイルムの将来性は、利益を伸ばしている事業と、投資回収を待つ事業を分けると判断しやすくなります。
2026年3月期は売上高3兆3,570億円、営業利益3,502億円となり、どちらも過去最高でした。エレクトロニクスの営業利益は前期比34.4%増、イメージングは14.9%増となり、全社の利益を支えています。
一方、ヘルスケアの営業利益は20.3%減でした。バイオ医薬品の製造を受託するバイオCDMOでは大型設備の稼働が始まっていますが、立ち上げ費用が先に発生しています。ビジネスイノベーションでは一部分社化を検討しており、今後の会社構成も変わる可能性があります。
直近の第1四半期は売上高が前年同期比10.3%増えた一方、営業利益は32.0%減りました。半導体材料の成長が続くかに加え、バイオCDMOと事業再編が利益改善につながるかを確認していきます。
富士フイルムは何で稼ぐ会社か
富士フイルムは、次の4事業で構成されています。売上規模が大きいのはヘルスケアとビジネスイノベーションですが、足元の利益率はエレクトロニクスとイメージングが高くなっています。
| 事業 | 主な製品・サービス | 支える市場 |
|---|---|---|
| ヘルスケア | 内視鏡、医療IT、バイオCDMO、試薬・培地 | 検査・診断、バイオ医薬品の開発・生産 |
| エレクトロニクス | 半導体材料、ディスプレイ材料、データテープ | 半導体製造、データセンター、電子機器 |
| ビジネスイノベーション | 複合機、業務システム、クラウド、デジタル印刷 | 企業の業務効率化、印刷・文書管理 |
| イメージング | instax、デジタルカメラ、放送・産業用レンズ | 写真、映像制作、検査・セキュリティー |
写真で培った画像処理や材料技術を、医療や電子材料へ広げてきた点が特徴です。現在は、イメージングが大きな利益を生み、その資金をヘルスケアや半導体材料の成長投資へ回す構造になっています。
富士フイルムの将来性を見る5つのポイント
- 収益基盤:イメージングと半導体材料の利益で、先行投資や既存事業の変動を補えるか。
- 利益成長:売上高だけでなく、全社の営業利益率を10%台から高められるか。
- 成長分野の収益化:半導体材料の増益を続け、バイオCDMOの新設備を利益へつなげられるか。
- 投資と事業整理:大型投資を回収しながら、複合機・印刷関連の再編を進められるか。
- 中期計画の進捗:2030年度の売上高4兆円、営業利益率約15%へ近づけるか。
業績推移|連結3年と同じ区分で比べられる事業別2年
連結では3年間で売上高が約4,000億円、営業利益が735億円増えました。事業別では、エレクトロニクスとイメージングの伸びが目立ちます。
| 事業 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 連結合計 | 売上高 2兆9,609億円営業利益率 9.3% | 売上高 3兆1,958億円営業利益率 10.3% | 売上高 3兆3,570億円営業利益率 10.4% |
| ヘルスケア | 区分変更前のため未掲載 | 売上高 1兆478億円営業利益率 7.6% | 売上高 1兆989億円営業利益率 5.8% |
| エレクトロニクス | 区分変更前のため未掲載 | 売上高 4,076億円営業利益率 18.4% | 売上高 4,562億円営業利益率 22.1% |
| ビジネスイノベーション | 区分変更前のため未掲載 | 売上高 1兆1,985億円営業利益率 6.2% | 売上高 1兆1,748億円営業利益率 5.4% |
| イメージング | 区分変更前のため未掲載 | 売上高 5,420億円営業利益率 25.7% | 売上高 6,271億円営業利益率 25.5% |
エレクトロニクスは半導体材料の販売増で利益率が22.1%へ上がり、イメージングは25%台を維持しました。一方、ヘルスケアとビジネスイノベーションは増収・成長投資がそのまま利益増につながっていません。
金額は会社資料に合わせて億円で表示しています。試薬事業がエレクトロニクスからヘルスケアへ移ったため、事業別は会社が同じ区分へ組み替えた2025年3月期と2026年3月期を比較しています。全社費用などがあるため、事業別の利益合計は連結合計と一致しません。
成長分野|半導体材料は伸び、バイオCDMOは利益化が課題
2027年3月期第1四半期は、エレクトロニクスが増収増益となる一方、ヘルスケアとビジネスイノベーションは営業赤字でした。
| 事業 | 売上高 | 前年同期比 | 営業利益 |
|---|---|---|---|
| ヘルスケア | 2,568億円 | 12.4%増 | 127億円の赤字 |
| エレクトロニクス | 1,277億円 | 25.0%増 | 311億円・38.2%増 |
| ビジネスイノベーション | 2,732億円 | 0.1%減 | 14億円の赤字 |
| イメージング | 1,688億円 | 16.2%増 | 434億円・3.9%増 |
| 連結合計 | 8,265億円 | 10.3%増 | 512億円・32.0%減 |
半導体材料はAI向けの需要を利益へつなげている
エレクトロニクスでは、半導体製造で表面を平らにするCMPスラリーや、先端工程で使う現像液などが伸びました。第1四半期の売上高は25.0%増、営業利益は38.2%増で、成長市場を実際の利益へつなげています。
バイオCDMOは売上拡大より利益の立ち上がりを確認する
デンマークと米国で大型設備の稼働を進めていますが、米国の新設備では人員や固定費が先に発生しています。会社は2027年度以降を利益化の段階と位置づけているため、受注した案件の生産開始と設備稼働率が今後の確認点です。
VISION2030と事業再編|投資を利益に変えられるか
富士フイルムは、成長分野へ資金を振り向けながら、利益率が低い事業の再編を進める方針です。
| 項目 | 会社の方針 | 今後見ること |
|---|---|---|
| 成長投資 | 2024~2026年度に研究開発費と設備投資を合計1.9兆円とし、バイオCDMOと半導体材料を中心に投資 | 新設備の稼働率と年間利益 |
| 2030年度目標 | 売上高4兆円、営業利益率約15% | 現在の10%台から利益率を高められるか |
| ビジネスイノベーション | 2~3年後を視野に、一部分社化を選択肢として検討 | 実施の有無と、富士フイルム全体の収益構成 |
| 印刷関連 | 海外の印刷版材料事業の一部を譲渡し、生産拠点を集約 | 利益率の改善と残る事業の競争力 |
2027年3月期の会社予想は、売上高3兆5,600億円、営業利益3,650億円です。VISION2030の2026年度目標である売上高3兆4,500億円、営業利益3,600億円を上回りますが、2030年度の営業利益率約15%に対して会社予想は約10.3%で、利益率にはまだ差があります。
ビジネスイノベーションの一部分社化は検討段階で、実施は決まっていません。実施する場合は富士フイルムホールディングスの保有比率を20%未満とする想定のため、現在の売上高の約3分の1を占める事業が連結から外れる可能性も含めて見ていく必要があります。
将来性評価|複数の成長市場がある一方、利益化と再編を見極める
| 評価軸 | 評価 | 現在の判断 | 今後の確認点 |
|---|---|---|---|
| 収益基盤 | 強い | 4事業を持ち、イメージングが高い利益率を維持 | 分社化後も事業分散を保てるか |
| 利益成長 | 改善 | 3年間で営業利益が2,767億円から3,502億円へ増加 | 営業利益率を10%台から高められるか |
| 成長分野の収益化 | 差がある | 半導体材料は増益、バイオCDMOは立ち上げ費用が先行 | 米国新設備の受注、生産開始、稼働率 |
| 投資・事業整理 | 要確認 | 成長投資と既存事業の譲渡・分社化検討を同時に進行 | 投資後の利益増と再編後の収益構成 |
| 中期計画 | 進行中 | 2026年度の売上高・営業利益目標は会社予想で上回る | 2030年度の営業利益率約15%への道筋 |
医療、半導体材料、画像・映像など複数の成長市場を持つ会社を重視し、先行投資を含めて中長期の変化を見たい人です。
すべての主要事業で足元の利益が安定している会社や、大きな分社化・事業再編が少ない会社を優先したい人です。
富士フイルムには、半導体材料とイメージングという現在の利益源があります。将来性をさらに高めるには、バイオCDMOの利益化と、再編後も安定した収益基盤を維持することが条件になります。
最終判断|富士フイルムへの応募を検討するか、他社と比べるか
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