【就活生必見】クラレの将来性はSDGsにあり!?その理由と懸念点について詳細に解説!

目次

結論

  • 中期的(~5年間)な将来性はビニルアセテート事業の好業績により有望
  • 長期的(5年間~)な将来性は新規製品の需要拡大により良好
  • SDGs関連製品のコストに不安点あり

将来性の評価方法

今回分析するのは大手化学メーカー株式会社クラレの将来性になります。

今回は2024年2月8日に発表された「株式会社クラレ 20222023年度本決算」をもとに企業分析を行いたいと思います。
詳細な将来性の評価方法が気になる方にはこちら!

それではさっそく各事業の業績から考察していきましょう。

クラレの事業内容・業績

クラレ株式会社は「ビニルアセテート事業」「機能材料事業」「繊維事業」「「イソプレン事業」の4つから構成されています。

それぞれクラレの将来性に関わるのか、事業内容・業績・社会情勢をふまえて考察していきましょう。

ビニルアセテート事業

世界トップシェアを誇るポバールを提供

ビニルアセテート事業は様々なプラスチック製品を提供する事業です。

プラスチックの原料であるポリビニルアルコール(ポバール)を中心とした事業で世界トップシェアです。
最近は「エバール」と呼ばれるプラスチックの生産に力を入れています。

エバールは従来のプラスチックにないガスバリア性があることから食品や医薬品の包装、自動車のガソリンタンクに用いられています。

クラレの売上高50%以上を占める業績

ビニルアセテート事業の業績について見ていきましょう。

営業利益・・・本業で計上した売上高から原価、販管費(人件費、広告費など)を差し引いた金額

上図の通り、4年間を通してみると業績はやや上昇傾向であることがわかります。
特にビニルアセテート事業はクラレ全体の売り上げの約50%を占めているので必然的に注目する必要があります。

高まるSDGsへの関心が事業成長のカギ

業績を考えるとこの事業はクラレの将来性に大きく関わってくるといっていいでしょう。
とはいえそれだけで判断しているわけではありません。

そもそも最近はSDGsに対する関心が高まりつつあります。
特に水に溶けないプラスチックは海洋環境に悪影響を及ぼすため、使用を避ける傾向にあります。

このような一側面を見ればクラレにとって悪材料になりますよね。
従来のプラスチックの消費量が大幅に低下するわけですから。

しかし別側面を見ればビジネスチャンスにも捉えることができます。
環境に良いプラスチック(水に溶けるプラスチックなど)を開発・商品化することで従来と同様の消費が期待できます。

また他社よりも効率よく安価で生産できれば、以前よりもシェアを拡大できる可能性があると考えられます。

以上のことから、ビニルアセテートはクラレ全体の約半分の業績を占めている大きな事業です。
さらに良い方向にも悪い方向にも行く可能性をふまえると、クラレの将来性に大きく関わってくる事業といえるでしょう。

機能材料事業

幅広い分野に商品を提供する事業

機能材料事業はメタクリル樹脂を用いたプラスチックを提供する事業です。
メタクリル樹脂は電子分野には液晶用のバックライト、日用品雑貨など幅広く用いられます。

他にもメディカル用途として歯科材料への応用や水処理のフィルターなど医療品から産業資材と幅広い分野に製品を展開している事業です。

値上げにより売上高が上昇

では機能材料事業の業績について見ていきましょう。

上図の通り、4年間を通してみると業績は上昇傾向であるといえるでしょう。
売上高の上昇は製品価格の値上げ、為替の影響によるものであるため、前向きな理由とはいいがたいでしょう。

数年間は業績が伸び悩む可能性あり

機能材料事業は数年間業績が伸び悩む可能性があります。
これは事業の主軸であるメタクリル樹脂の需要停滞が見込まれるからです。

メタクリル樹脂はiPhoneやPCなどの液晶として使用されていますが、最近どちらも売れ行きが悪いようです。

この要因としてiphoneは円安によって約14万となり購入者が激減、PCはコロナ需要が一服して購入量が落ち着いていることが挙げられます。

そのためPCやiphoneなどの売れ行きが戻らないと業績が伸びにくいことが予想されます。

繊維事業

生活用品を提供する繊維事業

繊維事業は合成繊維を用いてロープやひもなどを提供する事業です。
特にクラレが開発した「クラロン」はセメントやプラスチックの補強材や刺繡など様々な分野で使われています。

4年間の業績は停滞気味

では繊維事業の業績を見ていきましょう。

上図の通り、4年間を通してみると業績は停滞しているようです。
繊維事業の業績はなぜ伸び悩んでいるのでしょうか?

繊維業界は向かい風が強い

大きな要因として繊維業界がSDGsに反した業界である点です。

繊維業界は合成綿であるポリエチレンやポリプロピレンなど石油由来からできる原料に依存しています。
これでは持続可能社会の実現とは反していますね。

そのため再生繊維や生分解性繊維など環境に適した製品を製造しない限り、繊維事業の収益は改善することはないと考えられます。

以上のことから、現在の技術では環境配慮に反した製品の製造しかできないため将来性はないといえるでしょう。

イソプレン事業

イソプレンからゴム製品を製造する事業

イソプレン事業はイソプレンを用いたプラスチックやゴムを提供する事業です。

特にクラレが自社開発した「ジェネスタ」は耐熱性・耐薬品性に優れ、電気・電子部品や自動車部品へ用途が拡大しています。

新工場増設に伴い業績悪化

ではイソプレン事業の業績について見ていきましょう。

上図の通り、2024年度は急激に業績が悪化しているように見えますが、赤字のほとんどはタイに新設した工場の減価償却費によるものです。
それでは今後はどのような展開が予想されるのでしょうか?

今後は需要回復が見込まれる

クラレのイソプレンゴムは主に自動車用途として使われており、近年までは自動車需要がやや停滞していた背景もあったため、需要が減少していました。

しかし最近では日本国内メーカーのハイブリット車が見直され、需要増が見込まれています。
そのため今後の業績は徐々に回復していくことが考えられます。

ジェネスタの可能性について

このイソプレン事業で注目したいのは「ジェネスタ」です。
個人的に今後の伸びしろが最もあり、最も成長する可能性が高いと考えています。

主な理由は自動車部品への応用が期待できる点ですが、詳しくは後ほど解説したいと思います。

以上のことから、「ジェネスタ」の台頭によりイソプレン事業はクラレの将来性を担うと考えています。

クラレの経営戦略

SDGsを意識した経営戦略

さっそくクラレの経営戦略について見ていきましょう。(参照元:株式会社クラレ 中期経営計画説明資料

クラレの経営戦略
クラレの経営戦略

クラレはSDGsなどの社会・環境価値を特に重視しています。
水溶性ポバールやエバール、炭素材料などが代表的です。

その中でも特に成長が期待できる事業・製品を中心に投資・開発を行っていくようです。

将来性を考えるうえで重要な3つのポイント

詳細な説明は後ほど行いますが、クラレの将来性を考えるに当たって3つのポイントを押さえておきましょう。

  • クラレはサステナビリティへの意識が非常に高い
  • 「水溶性ポバール」「ジェネスタ」などへの期待大
  • 縮小・撤退する製品・事業もある

特に縮小する事業の筆頭候補としては繊維事業に当たるのではないかと考えています。
しかしこの件についてはまだ言及されていないので今後の動向を見てきましょう。

では以上のことをふまえてクラレの将来性を考察していきましょう。

クラレの将来性について

各事業の業績・現在の社会情勢・経営戦略をもとに「私の考えるクラレの将来性」を中期的(~5年)・長期的(5年~)に分けて解説いたします。

良好な業績が中期的な成長を下支え

高い利益率と需要拡大に期待

中期的(~5年間)なクラレの将来性はビニルアセテート事業の業績寄与により良好であると考えています。
やはりビニルアセテート事業がクラレ全体の業績の半分を占めているのは無視できません。

この事業は高い利益率を誇っているだけでなく、発展途上国であるアジア諸国での需要拡大が期待できます。
短期的な成長だけ見れば圧倒的といえるでしょう。

水溶性ポバールがSDGsによって市場拡大

またそれだけでなく今後の成長軸として「水溶性ポバール」があります。
実際の資料を見ていきましょう。(参照元:同上)

ポバールに関する経営戦略
ポバールに関する経営戦略

上図で注目したいのは欧州が生産中心の拠点になっているところです。

SDGsについて学んでいる方は欧州各国が他地域に比べ環境意識が高いことをご存じだと思います。
言い換えれば環境負荷が小さい「水溶性ポバール」の需要が最も高い地域であるということです。

それに対しクラレもポーランドに新工場を設立し、生産能力と需要拡大に向けて本格的に行動していることがわかります。
また近年の環境意識が急速に高まっていることから、長期的な需要の拡大も期待できます。

さらに現状はまだ先行投資の状態といえるのにも関わらず、生産拠点を各所に構えるクラレは今後の市場をより独占できる可能性が高いですね。

以上のことから、中期的なクラレの将来性は期待できるといえるでしょう。

クラレの長期的な将来性について

期待できる新製品とは?

長期的なクラレの将来性について考察しますが、皆さんはこれまでを振り返ってどのように考えていますか?

SDGsの台頭による環境負荷の小さな製品のニーズが上昇する?
機能材料事業の活性炭に期待?

もちろん環境対策製品も成長していくと思いますが、私が特に注目しているのは「ジェネスタ」です。
ジェネスタは長期的なクラレの将来性を担う重要な製品だと考えています。

ジェネスタがクラレを支える理由

ではなぜ私がジェネスタに期待しているのでしょうか?

主な理由はジェネスタが今後の成長が期待できる分野への用途が拡大している点です。
ジェネスタの特徴と実際にどのような製品に使われるのか見ていきましょう。(参照元:同上)

ジェネスタに関する経営戦略
ジェネスタに関する経営戦略

上図の右下に記述されている通り、ジェネスタは電子部品やEV車、5G関連への用途があります。

例えばEV車はガソリン車と比べ地球負荷が小さく、世界的な普及が有望視されています。
クラレのジェネスタはEV車の高電圧、バッテリー関連、車体構造などの部品に定評があります。

従来品よりも軽量・燃料バリア性など高機能であることから、他社と比べ競争が優位だと考えられます。(詳しくは「クラレ ジェネスタ事業の展開」を参照)

そのため今後のEV市場拡大に伴い、EV車部品として大きな需要を確保できます。
さらに同様に市場の拡大が期待される5G製品への活用が可能であり、さらなる成長が見込めると思います。

今後の市場拡大を狙った工場増設

クラレも今後の市場拡大に期待し、タイに第二期増設を行っていることから将来が非常に有望である製品といえるでしょう。
これだけでも長期的なクラレの将来性は十分に保障されていると思います。

これに加えてSDGs関連製品も大きく成長します。
水溶性ポバールだけでなく、機能材料事業の活性炭など期待が高まる製品ばかりです。

以上より、EV車への活用が期待されるジェネスタの市場拡大に伴い長期的なクラレの将来性は有望であるといえるでしょう。

クラレの将来性における懸念点とは?

ではここまでクラレの将来性についてべた褒めしてきましたが、最後に懸念点だけ押さえておきましょう。

SDGsは儲かりにくいビジネス

原料や開発のコストが大きい

私が最も心配しているのは製品価格が高いSDGs製品を購入する企業が少ない点です。

この主な原因は製品の原料・開発の生産コストにあります。

そもそも環境を配慮した製品は従来の製品より高性能です。
基本的にモノは高性能であるほど、原料や開発コストの比率が大きくなります

原価が高くなると、必然的に製品価格も高くなります。
そうしないと作るだけ損になって赤字になりますからね。

これが取引先との摩擦につながってしまいます。

この問題をクラレをもとに考えてみましょう。

値上げに敏感な法人との取引に持ち込みにくい

クラレは製品の大半を法人(企業)に販売するBtoBビジネスがメインです。
法人との取引はSDGs製品を導入する障害になっています。

そもそも法人はクラレの製品を原料としてモノを製造します。
これにより一般消費者よりも大量に購入するため、法人は製品価格に非常に敏感です。

もし仮に毎月100万kg使用する製品が1円/kgだけ値上げしたら、取引相手からするとそれは毎月100万円の値上げを意味します。
言い換えれば一般消費者にとっては1円の値上げでも、企業にとっては100万円の値上げを意味します。

先ほどお話しした原料・開発コストが高くなることをふまえて考えると、SDGs製品の価格は必然的に今までの製品よりも高くなることが推測できますね。
これではSDGs製品を購入してくれる企業が減ってしまいます。

まとめると、従来製品よりも価格が高いSDGs製品は儲かりにくいビジネスであることが考えられます。

ではこの問題点に解決策はあるのでしょうか?
最後に私なりの解決策について考えてみました。

考えられる解決策とは?

SDGs製品の価値を高める

前述の通り、SDGs製品の問題は製品価格が高いところです。
では単純に考えて製品価格が低くなれば解決できるでしょうか??

もちろんその方法もあるかもしれません。
しかし一般的にコストを低くするのは大量に開発できる方法ができてからです。

したがって開発段階のSDGs製品のコストカットは非常に難しいといえます。

では逆に考えて製品価格の低下が難しいなら、高い価格に見合う価値を示せればよいのです。
つまり製品が高くても企業が買いたいと思う価値にすることが重要といえるでしょう。

ではどうすれば価値を高めることができるでしょうか?

地道な努力が価値につながる

結論からいうと「時間経過と継続的な取り組みが価値につながる」と考えています。
簡単に説明していきましょう。

SDGs製品の価値を高めるためには企業を取り巻く環境の変化が必要です。
わかりやすく言えばSDGsに取り組むことで企業が「利益」を得るような環境です。

この環境づくりをすればSDGsに取り組む企業が増え、SDGsの需要が増加することで価値を高めることができます。

このような取り組みを促進する役目は各国の政府が担っています。
しかし年々SDGsを意識した政策が増えては来ているものの、まだまだ足りないといえます。

つまり企業はSDGsへの取り組みが活発化するような政策が打ち出されるまで、我慢強く研究開発を続けていく必要があるわけです。

最後に

今回は株式会社クラレの将来性について紹介しました。

日本を代表するクラレの就活倍率は非常に高いことが予想されます。
「本気でクラレに受かりたい」という方は私が紹介した資料は目を通しておくことをオススメします。

面接でクラレの将来性・今後について聞かれてもすぐに答えられる自分なりの回答は作っておくといいでしょう。
将来性を分析することは株式会社クラレを知ることにもつながると思います。

以上でクラレの将来性についての分析は終わりになります。

それではまた次回に!

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