こんにちわ!
就活生・転職のために企業分析を行うレイです。
今回は日本のニッチな企業代表である「扶桑化学工業」の将来性について評価いたします。
気になる方は将来性の評価方法について以下の記事をご参照ください。
今回は「2022年3月期」のデータをもとに扶桑化学工業の将来性を評価いたします。
それではさっそく見ていきましょう。
扶桑化学工業について
事業内容
扶桑化学工業の代表的な2事業について見ていきましょう。
食品添加物を提供するライフサイエンス
まず一つ目は食品添加物を提供するライフサイエンス事業です。
ライフサイエンス事業は扶桑化学工業の売り上げの約6割を占める大規模な事業です。
食品添加物はジュースやお菓子などの酸味料として知られる「リンゴ酸」を製造しており、世界トップクラスのシェアを誇っています。
最近では食品にとどまらず化粧品やバイオテクノロジーなどへの応用が期待されています。
半導体研磨が好調な電子・機能性分野
次に半導体の研磨に関する製品の製造・提供を主に行う電子部品および機能性化学品事業です。
この事業が扶桑化学工業の売り上げの約4割を占めております。
多数の基板の組み合わせからなる半導体は突起物や不純物で基板のズレが生じると不良品となってしまいます。
そのため基板の多い高性能な半導体を製造するための重要な工程の一つに半導体研磨があります。(参照:Orbray)
ほかにもパソコンやスマートフォンの軽量化に伴い、電子部品の微細化が求めれます。
このように研磨技術は様々な電子部品に使用されていることがわかります。
この事業では主に半導体研磨に使われるコロイダルシリカの製造・販売を行っているようです。
以上が扶桑化学工業を代表する2つの事業になりますが、皆さんにとってあまり聞きなじみのない製品を提供する扶桑化学工業は日本を代表するニッチな企業として知られています。
業績について
2021年度は過去最高益を更新
まずは2018年度から2021年までの扶桑化学工業の業績について見ていきましょう。
上図からわかるように4年間を通して業績は右肩上がりのようですね。
特に2021年度は過去最高益を更新していることから好調な様子がうかがえます。
ではなぜここまで業績が好調だったのでしょうか??
両事業ともに需要増加
業績が好調だったのはライフサイエンス事業、電子・機能性事業のどちらも需要増加したからです。
ライフサイエンス事業は海外市場のコロナショックからの需要回復に円安効果も相まって増収となりました。。
また電子・機能性事業は半導体不足や高性能化に伴い、新規顧客の多数獲得など全体的に需要が増加したようです。
いずれにせよ原材料の高騰の影響を受けながら、過去最高益を更新できたのは素晴らしいことですね。
経営戦略について
2025年までの経営計画について
扶桑化学工業は2025年までの中期経営計画を発表しているので、まずは概要を見ていきましょう。
上図からわかるように売上高580億円(5年間で3割増)を目指し、既存の2事業の強化と新規事業への挑戦を掲げています。
またライフサイエンス事業にとって大きな関わりがあるSDGsにも注目しているようです。
それでは具体的な経営戦略について重要ポイントを押さえておきましょう。
ライフサイエンスは海外市場狙いへ
ライフサイエンス事業の経営方針を見ていきましょう。
現在は国内市場が縮小しているのに対し、海外市場は拡大の方向へ向かっているようです。
おそらく人口減少が進む日本と人口増加が進む海外の違いだと思います。
特に東南アジア諸国などの人口増加に目を向けており、限られた食料資源を有効活用できる技術の開発に取り組む意思を示しています。
つまり人口増加で拡大する海外市場を獲得しようとする目的があることがわかります、
半導体研磨への投資で売上高アップへ
続いて電子部品および機能性化学品事業の目玉戦略について見ていきましょう。
2025年までに売上高30%アップを目指すため、新たに2工場の設立を予定しているようです。
この2工場が稼働することで半導体研磨に用いられるコロイダルシリカの生産能力が3割増となることから、目標達成も夢ではないことがわかります。
それでは以上の情報を参考にしながら、扶桑化学の将来性について解説していきましょう。
扶桑化学の将来性
まずは扶桑化学工業の将来性について次のように考えています。
この結論をもとになぜ扶桑化学の将来性があるのかについて2つのポイントと懸念点を解説していきます。
半導体研磨が企業の成長を加速
半導体需要が増加し続ける理由
半導体市場の需要はまだまだ続くといわれていますが、なぜででしょうか?
以下の図を見てみましょう。(参照:扶桑化学)
上図からわかるようにIT技術の基盤となる半導体は国家経済の安定に大きな影響を与えることが判明しています。
そのため半導体市場は国からの補助金が出やすく経済支援を受けやすい状況にあると考えられます。
実際にアメリカ政府は2023年から約7兆5000億円もの補助金を半導体生産・開発に充てるようです。(参照:日本経済新聞)
したがって高まるデジタル化だけでなく、手厚い経済支援を受けられる半導体市場は今後も需要が増加すると推測できます。
生産能力アップで事業規模拡大へ
半導体需要が増加すれば半導体研磨も求められることから、コロイダルシリカの販売数量も増加することが見込まれます。
それに対して扶桑化学は2023年に鹿島工場、2024年には京都工場の設立・稼働を予定し、コロイダルシリカの生産能力は3割増加すると発表しています。
つまり電子部品事業の売上高はさらに向上し、事業規模はより大きくなっていくことが考えられます。
以上のことから、増加する需要に対して供給能力を増強しており成長が見込まれます。
これだけでも扶桑化学の将来性はあるといえますが、もう一つ押さえておきたいポイントを説明しましょう。
食料技術は需要拡大が見込まれる
食料不足で求められる食品技術
近年、少子化に悩まされる日本とは対照的に人口増加が止まらないのが海外諸国です。
例えば皆さんご存知の中国は人口約14.2億人というマンモス国家ですよね。
その中国の人口を2023年に追い抜くといわれているインドも有名です。(参照:NHK)
しかし急激な人口増加は様々な問題を引き起こします。
生活基盤となる住宅や労働環境の供給不足など考えられますが、一番の問題は食料不足です。
この食料不足は近い将来に起こる問題であることから、食料品に関する技術はさらに重要視されると考えられます。
技術の進歩でフードロス問題の解決も
またSDGsの課題の一つにもなるほど深刻化しているフードロス問題があります。
食品の売れ残しや食べ残し、消費期限切れなどにより不足しているはずの食料を捨ててしまう問題です。
この問題を解決するためにもライフサイエンス事業は、食品の消費期限を延ばす防腐・日持向上作用を持つ製剤の開発に力を入れています。
以上のことから、ライフサイエンス事業は食料不足やフードロス問題の解決に伴う需要増加が見込まれることがわかります。
最後に
今回は扶桑化学工業の将来性について解説いたしました。
果実酸を提供するライフサイエンス事業、半導体の研磨剤を提供する電子部品および機能性化学品事業のどちらも需要拡大が見込まれることから、扶桑化学工業の将来性はあると考えられます。
半導体に関しては様々な企業が需要拡大を見込んでいるので、まだまだ盛り上がっていく市場かもしれませんね。
半導体関連企業の将来性はこのブログでも多く取り上げているので是非確認してみてください!
それではまた次回に!!
結論
- 安定性は高い自己資本比率と需要増から高い
- 成長性は業界において競争優位性があることから高い
- 海外出張希望の方や学生研究において結果を残した就活生は優位に立てる
事業紹介
扶桑化学には二つの事業があります。
リンゴ酸って何?どんな食材に使われてるの?
では各事業の売り上げ、利益構成比をみていきましょう!
※電子材料および機能性化学品事業は電子化学事業といたします。
やはりライフサイエンスは競合他社が少ないこともあり売上高は非常に高いといえます。
それに対して電子化学は売り上げこそ劣っていますが、単価が高く需要があり大きな利益を上げています。
・食品関連事業は売り上げこそ高いものの利益率は低いのが一般的(生活消耗品だから)
・電子部品などは単価が高いので利益率が高い
各事業の内容・業績(予想込み)
ライフサイエンス事業
まずはライフサイエンス事業の売り上げ、利益推移を見ていきましょう。
2018年から2020年度までコロナウイルスの関係もあり売り上げは減少傾向にありました。
しかし2021年度には約27.5%増加していることから上昇傾向にあることがあります。
営業利益については売り上げが減少していますが、利益率を見れば毎年10%以上は確保できていることから安定性しているといえるでしょう。
利益率・・・売上高に対し営業利益(人件費などの販売管理費、原価を除いた額)の割合
ライフサイエンス事業はリンゴ酸を主軸とした食品関連事業です。
ほかにもクエン酸や乳酸なども取り扱い、北米、アジア・オセアニア、欧州でも販売ルートを開拓しています。
最近では需要の高いリンゴ酸の増産のため鹿島に新工場を設立したり、海外新規顧客の獲得のため積極的に販売活動を継続しています。
電子材料および機能性化学品事業
次に電子材料および機能性化学品事業(以後は電子化学事業)を見ていきましょう。
こちらは売上高および利益がほぼ毎年堅調に推移していることがわかります。
ここで注目すべきポイントは毎年20%以上の利益率を誇っているところです。これはとてもすごいことで会社が半導体研磨剤の中でも確固たる地位を築いているということです。
電子化学事業は半導体研磨剤を中心にした電子部品事業です。
現在デジタル化が進む中で、常日頃皆さんが持ち歩けるようにパソコンやスマホなどの軽量化が注目を浴びています。
それらの需要、競合他社が少ないおかげでより多くの顧客を獲得できています。
またほかにも印刷機に使われるトナーで用いられるナノパウダーなど幅広い分野の製品を扱っている事業でもあります。
企業評価
ここでは実際のデータや数値をもとに扶桑化学工業の「安定性」「成長性・将来性」について分析いたします。
安定性
高い自己資本比率と需要増加の可能性が高いことから88点/100点
まずは扶桑化学の自己資本比率についてみていきましょう。
2017年から2020年度までの自己資本比率の推移です。正直に言って非常に高い割合を維持しているといえます。
そもそも指標として理想の企業は70%以上、倒産しにくい企業は30~40%以上といわれていることから全く問題ないといえます。
また電子化学事業では利益率が毎年20%以上確保できていることから業界に確固たる地位を築いているところも評価ポイントです。
以上の評価から、90点とはいかないまでも88点という高得点をつけさせていただきました。
将来性・成長性
デジタル化の普及だけでなく確固たる地位を築いていることから90点/100点
まずはPER、ROEの推移から見ていきましょう。
今年度はROE9.9%、PER21.3%(予想)と思われます。
投資家目線で値を考えるとこんな感じ!
・PERは低い方が(株価が割安なので)好まれる(化学系のPER企業平均は33)
・ROEは(自己資本比率が高ければ)高い方が好まれる
これを踏まえて考えるとかなり割安な株であることがわかります。
それに対し高い自己資本比率に対しROEは横ばい、やや減少傾向にあるとみられます。
他のデータも見ていきましょう。
以下に示すのは全事業の売り上げ、利益の推移です。
これを見ると売り上げ、利益ともに堅調に増加していることがわかります。
特に電子化学事業で扱う半導体研磨剤の売り上げ、利益の増加は今後の成長を後押ししていくでしょう。
また 半導体研磨剤の需要増加により、経営計画では京都に第二工場の増設を決定(2021年7月) していることからより多くの資金を投資して需要を取り逃さないようにしています。
デジタル化の普及・・・国内だけでなく世界的に急速に拡大しており、半導体が不足するほど需要が高まっている!
以上のことをふまえると今後も飛躍的な成長を遂げる可能性が高いです。よって90点をつけさせていただきました。
就活生へのコメント(採用情報など)
今回紹介した扶桑化学工業株式会社は何と理系のみの採用となっています。
さて扶桑化学の特徴をまとめると以下の4点が挙げられます。
- 事業が2つしかなく、いずれも会社のコアとなっている(事業投資がされやすい)
- 安定的な経営志向(自己資本比率が高い)である
- かなりニッチな業界に進出している(今後も新たな分野に出る可能性あり)
- ライフサイエンス事業は海外新規顧客の獲得に専念している
以上のことを頭に入れつつ、志望動機を組み立てていくとしましょう。
最も受けがいいのは海外出張はぜひやりたいという姿勢の就活生です。
ライフサイエンス事業は新規の海外顧客獲得に力を入れており、今後も続いていくでしょう。特に人口が急増している東南アジア諸国などをターゲットにしている可能性は非常に高いです。
また学生の頃の研究での成果をガクチカでアピールするのがよいでしょう。
おそらく採用後、1,2年は現場研修も含め研究開発に携わる可能性が高いです。
そのため何かしらの結果を残しているのであれば面接官に好印象を与えるのは間違いないでしょう。
ちなみに志望動機に困っている学生はインターンに申し込んでみるといいかもしれません。
現在(2021/12/10)ではインターン情報が発信されていませんが、去年のインターン情報が12/26に発信されていたのでもう少し後になると思います。詳しくは扶桑化学工業の採用情報から確認してみてください
「企業を知りたい!」「応募したいけど志望動機が思いつかない」という就活生にインターンはおすすめ!
最後に
今回紹介した扶桑化学工業株式会社は今まで見たことないほどニッチな分野を攻めている企業であると思いました。
半導体のLSIやウエハーを扱う企業ばかりを紹介してきたせいで下調べに非常に時間がかかりました。
個人的には自己資本比率が高い点や自社製品の価値を高めている点は気に入っていますが、理系のみの採用に絞っているのはあまりうれしくないです。
とはいえ今後も成長していくのは間違いない会社なので、ぜひチェックしてみてください。
それでは!
コメント