クレハは、家庭用ラップだけでなく、電池部材、耐熱樹脂、農薬、医薬品などを扱う化学メーカーです。電池の電極を固める材料に使うフッ素樹脂PVDFの不振をどう立て直し、別の事業を伸ばすのかを3年業績と新中期計画から整理します。
結論|高収益な樹脂製品を持ち、PVDF依存からの転換が焦点
| 収益基盤 | 安定 | 樹脂製品は3年間、17~19%台の本業利益率を保ち、家庭用品が利益を支えています。 |
|---|---|---|
| 成長分野 | 転換中 | PGAの販売が伸び、農薬・農業資材・医療材料を含むライフサイエンスを育成しています。 |
| 確認点 | 要確認 | PVDFは設備価値を340億円引き下げており、増強設備と新製品を利益につなげられるかを見ます。 |
クレハは何で稼ぐ会社か
クレハは、独自技術を使った産業材料と、NEWクレラップなどの消費者向け商品を持ちます。売上規模は機能製品が最大ですが、現在の利益は樹脂製品を中心に複数事業が支えています。
| 事業 | 主な製品 | 何に使われるか |
|---|---|---|
| 機能製品 | PVDF、PPS、PGA、炭素製品 | 電池部材、自動車・電気部品、石油・天然ガスの掘削、半導体製造装置など |
| 化学製品 | 農薬、慢性腎不全用剤、工業薬品 | 農作物の病害対策、医療、水処理や化学品の製造など |
| 樹脂製品 | NEWクレラップ、食品包装フィルム、釣糸シーガー | 家庭用品、食品保存・包装、釣り向け |
| 建設・その他 | 建設、環境、運送、病院 | 工事、産業廃棄物処理、物流、地域医療など |
PVDFはリチウムイオン電池の需要拡大が期待される一方、足元では欧米の電気自動車市場の停滞が響いています。家庭用品や釣糸、農薬など、電池材料と異なる需要を持つ事業がある点はクレハの特徴です。
クレハの将来性を見る5つのポイント
- 樹脂製品の収益性:家庭用品や釣糸が、安定した利益を維持できるか。
- PVDFの立て直し:電池市場の変化に合わせた新製品を販売し、増強設備を生かせるか。
- PGAの黒字化:販売増と米国工場の安定生産を、継続的な利益へつなげられるか。
- ライフサイエンスの育成:農薬・農業資材・医療材料を第三の利益源にできるか。
- 利益源の分散:特定製品に頼らず、複数事業で目標利益を達成できるか。
業績推移|樹脂製品が利益を支え、機能製品は回復の途中
連結売上収益は3年間で1,780億円から1,617億円へ減り、一時的な損益を除いた本業の利益も186億円から145億円へ下がりました。機能製品は2025年3月期の赤字から回復しましたが、樹脂製品との利益差は残っています。
| 事業 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 連結合計 | 売上 1,780億円本業利益率 10.4% | 売上 1,620億円本業利益率 6.2% | 売上 1,617億円本業利益率 9.0% |
| 機能製品 | 売上 645億円本業利益率 7.4% | 売上 574億円本業利益率 −3.5% | 売上 613億円本業利益率 3.4% |
| 化学製品 | 売上 339億円本業利益率 5.0% | 売上 307億円本業利益率 2.0% | 売上 295億円本業利益率 4.7% |
| 樹脂製品 | 売上 473億円本業利益率 17.3% | 売上 405億円本業利益率 17.5% | 売上 367億円本業利益率 18.8% |
| 建設関連 | 売上 139億円本業利益率 10.8% | 売上 148億円本業利益率 9.5% | 売上 160億円本業利益率 9.4% |
| その他関連 | 売上 182億円本業利益率 13.7% | 売上 186億円本業利益率 15.6% | 売上 182億円本業利益率 14.3% |
2026年3月期はPGAと耐熱樹脂PPSの改善で機能製品が黒字へ戻りました。樹脂製品は売上が縮小しても69億円の本業利益を確保し、会社全体を支えています。
同年度の営業損益は186億円の赤字ですが、PVDF設備340億円と医薬品設備25億円の価値を引き下げた会計処理が主因です。将来性は、この一度の損失と通常の事業利益を分けて判断します。
金額は会社資料の数値を億円単位に丸めています。2024年3月期と2025年3月期の事業利益は会社開示のセグメント利益、2026年3月期は同じ定義のコア営業利益を使用しています。
中期経営計画|PGA・ライフサイエンスを新たな柱にできるか
クレハは、PVDFの利益に偏った前計画を見直しました。2026~2028年度を基礎固めの期間とし、2028年度に本業の利益190億円、2035年度に機能製品・樹脂製品・ライフサイエンスの三本柱を目指します。
| 区分 | 会社の方針 | 現在地 | 今後見ること |
|---|---|---|---|
| PVDF | 電池市場に合わせ、リン酸鉄系電池向けの高付加価値な新製品を開発する | いわきの増強設備は2026年4月に完成。新製品は複数顧客が評価中 | 販売構成の変化と設備負担を吸収し、2026年度を底に利益を戻せるか |
| PGA | 石油・天然ガス掘削向けの販売を増やし、機能製品の収益基盤に育てる | 第1四半期の販売量は過去最高。米国工場は生産を再開したが安定操業の確認は続く | 2026年度に黒字化し、在庫評価の戻り益がなくても利益を出せるか |
| ライフサイエンス | 農薬で培った技術を、農業資材と医療材料にも広げて第三の柱にする | 新製品候補を育成中で、今後3年間は研究開発と事業基盤づくりを優先 | 新製品の発売を進め、農薬以外の売上と利益を増やせるか |
| 利益目標 | PVDFに大きく頼らず、2028年度の本業利益を190億円へ増やす | 2026年3月期実績145億円に対し、2027年3月期予想は120億円 | PGA、家庭用品、農薬など複数事業で45億円の差を埋められるか |
2027年3月期第1四半期は売上収益421億円、本業の利益59億円で増収増益でした。ただし、PGAの在庫評価損の戻り益、農薬の出荷時期、家庭用品の備蓄購買など、一時的な押し上げも含まれます。
会社は通期の本業利益予想を100億円から120億円へ上げましたが、前年度の145億円は下回ります。PVDFの新製品、PGAの安定生産、樹脂製品の通常需要が第2四半期以降も利益を支えるかが確認点です。
将来性評価|独自技術の強さと電池材料の不確実性を分けて見る
| 評価軸 | 評価 | 現在の判断 | 今後の確認点 |
|---|---|---|---|
| 樹脂製品の収益性 | 安定 | 売上が減っても3年間で17~19%台の本業利益率を維持した | 家庭用品と釣糸のブランド力を使い、販売量と利益を維持できるか |
| PVDFの立て直し | 再構築中 | 需要回復の遅れで設備価値を引き下げ、販売構成の変化で単価も下がった | リン酸鉄系電池向け新製品と新規顧客を実際の販売へつなげられるか |
| PGAの黒字化 | 販売増 | 天然ガス開発向け需要を取り込み、第1四半期の販売量は過去最高となった | 米国工場を安定して動かし、2026年度の黒字化を達成できるか |
| ライフサイエンス | 育成段階 | 農薬の技術基盤を持つが、第三の利益柱になるのは中期計画より先を想定している | 農業資材・医療材料の新製品を発売し、売上規模を広げられるか |
| 利益源の分散 | 要確認 | 複数事業が利益を出す一方、2027年3月期は前期からの本業減益を予想している | 一時的な増益要因を除いても、2028年度190億円へ近づけるか |
電池材料、耐熱樹脂、農薬、家庭用品など、独自製品を複数持つ化学メーカーの技術と事業転換に関心がある人です。
大型投資後の立て直しを待たず、足元から主力事業の利益が安定して伸びている会社を優先したい人です。
クレハには高収益な樹脂製品と、PVDF・PGAなどの独自材料があります。一方、2028年度の利益目標には、PVDFの立て直しとPGAの黒字定着が必要です。成長市場への参入だけでなく、複数事業で実際に利益を増やせるかを確認します。
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