「富士電機はパワー半導体やデータセンター需要で今後も伸びるのか」「会社全体は安定しているのか」。こうした疑問に答えるため、現在分かっている事実を整理しました。将来の業績を予想する記事ではありません。全社と事業別の3年業績、最新四半期、投資と中期計画を見ながら、就職・転職候補に残す、他社と比べる、候補から外す、ここで判断を終えるのうち、どれが自分に近いかを考えていきましょう。
結論|富士電機には将来性がある。電力・FAの収益基盤が強い
公式発表2025年度は売上高1兆2,276億円、営業利益1,366億円となり、営業利益率も11.1%まで高まりました。2023年度から3期連続で増収増益が続き、2026年度第1四半期も売上高は前年同期比10%増、営業利益は38%増です。ただし、半導体は電動車向け需要の減少と原材料価格の上昇が響き、2025年度通期と2026年度第1四半期のどちらも減益となっています。
2025年度は、営業利益率11%超を1年前倒しで達成しています。
足元の増収増益を支えているのは、エネルギーとインダストリーです。
電動車(xEV)需要、原材料、価格競争、SiC(炭化ケイ素)投資の回収を引き続き見ておきたいところです。
現在の将来性を支えているのは、半導体への期待ではなく、電力インフラ、データセンター電源、変電・蓄電、FA(工場の自動化)を中心とした収益基盤です。富士電機をおすすめできるのは、電力の安定供給や工場の省エネ・自動化に関わりたい人です。
一方、半導体は直近通期と第1四半期で減益となっています。パワー半導体の成長だけを理由に富士電機を選びたい人は、後ほど示す利益の数字を確認してから判断しましょう。
この結論でよいのか、次の5つの視点から確かめていきましょう。
富士電機の将来性を判断する5つの視点
「脱炭素」「データセンター」「SiC」は魅力のあるテーマですが、それだけでは富士電機を候補に残せるか決められません。ここからは、数字を次の5項目に分けて見ていきます。
売上高の伸びが、営業利益と利益率の改善にもつながっているかを見ます。
現在の利益を支えている事業と、事業間の偏りを整理します。
電力、データセンター、FAの需要が受注や利益にも表れているかがポイントです。
半導体の設備投資とSiC拡大が、収益改善へつながるかを見極めます。
全社目標だけでなく、事業ごとの収益性も改善しているかを比べます。
将来性の見方そのものを先に知りたい方は「企業の将来性を判断する5つの基準」も参考になります。
全社3年業績|3期連続増収増益、営業利益率は11.1%へ
公式発表2023~2025年度の通期実績を同じ指標で並べると、売上高、営業利益、営業利益率はいずれも3年連続で伸びています。
| 年度 | 売上高 | 営業利益 | 営業利益率 | 親会社株主に帰属する純利益 | 読み取れること |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年度 | 11,032 | 1,061 | 9.6% | 754 | 売上高1兆円超、全セグメントの利益率8%超 |
| 2024年度 | 11,234 | 1,176 | 10.5% | 922 | 営業利益率10%超を達成 |
| 2025年度 | 12,276 | 1,366 | 11.1% | 980 | エネルギーとインダストリーが増益をけん引 |
この2年間で、売上高は1,244億円、営業利益は305億円増えました。営業利益率も9.6%から11.1%へ上がっています。2025年度は、物量・生産増による275億円と為替による34億円の押し上げがあり、固定費の増加や原材料高を吸収できました。
2025年度のROIC(投下資本利益率)は12.6%、ネットD/Eレシオ(有利子負債と自己資本のバランスを見る指標)は0.0倍でした。財務面に余裕を持ちながら成長投資を進められる点も、候補に残す理由になります。とはいえ、全社が好調でも、すべての事業が同じように伸びているとは限りません。
出典:富士電機「2024年度通期決算」「2025年度通期決算」「富士電機レポート2026 財務・資本戦略」
最新決算|エネルギーとインダストリーが伸び、通期予想を上方修正
公式発表2026年度第1四半期も増収増益でした。会社はこの結果と足元の動向を受けて上期予想を引き上げ、増額分を通期予想にも反映しています。
| 指標 | 2025年度第1四半期 | 2026年度第1四半期 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,479 | 2,733 | +10.2% |
| 営業利益 | 181 | 250 | +38.1% |
| 営業利益率 | 7.3% | 9.2% | +1.9ポイント |
| 親会社株主に帰属する四半期純利益 | 109 | 207 | +89.9% |
営業利益が69億円増えた主な理由は、物量・生産増89億円、製品構成の違いなど43億円、為替9億円です。固定費増37億円と原材料価格上昇35億円の影響を上回りました。なお、純利益には投資有価証券売却益も含まれるため、本業の状態を見るなら営業利益を中心に考えるのが分かりやすいでしょう。
| 事業 | 2025年度第1四半期 | 2026年度第1四半期 | 現在の動き |
|---|---|---|---|
| エネルギー | 742/84 | 825/121 | すべての事業区分で増益、利益率14.7% |
| インダストリー | 873/29 | 1,039/85 | FA、オートメーション、器具、ITが増収 |
| 半導体 | 548/49 | 544/31 | 電装向け需要減と原材料高で減益 |
| 食品流通 | 263/31 | 261/27 | 自販機需要の減少を店舗流通が補う |
会社は売上高を1兆2,750億円から1兆3,000億円へ、営業利益を1,425億円から1,565億円へ引き上げています。
今回の通期修正は、上期予想の引き上げを反映したものです。下期も需要と利益率を保てるかが、次の決算で注目したい点です。
出典:富士電機「2026年度第1四半期決算」
事業別3年業績|エネルギーが伸び、半導体は減益
全社の増収増益が、どの事業から生まれたのかを見てみましょう。2023年度は当時の区分、2024年度と2025年度は会社が後の事業区分の組み替えを反映して再掲した値です。事業移管の影響があるため、厳密な増減率を比べるのではなく、利益がどちらへ動いているかをつかむ表として使います。
| 事業 | 2023年度 参考 | 2024年度 | 2025年度 | 3年で分かること |
|---|---|---|---|---|
| エネルギー | 3,428/301 | 3,543/363 | 3,942/595 | 売上・利益が拡大し、現在の主な成長軸 |
| インダストリー | 4,199/343 | 4,000/340 | 4,672/444 | FA市場の調整後に売上・利益が回復 |
| 半導体 | 2,280/362 | 2,368/371 | 2,374/235 | 売上は横ばい圏、直近利益は低下 |
| 食品流通 | 1,073/88 | 1,115/139 | 1,080/131 | 新紙幣対応需要の反動後も二桁利益率を維持 |
| その他 | 632/43 | 561/38 | 584/39 | 主要4事業以外の補足区分 |
| 消去・全社 | ▲579/▲76 | ▲354/▲73 | ▲375/▲78 | セグメント間取引と全社費用など |
全社の増益を支えているのは、電力、変電、蓄電、データセンター電源、FA・器具などです。
SiC需要への期待はありますが、半導体事業の営業利益は2024年度371億円から2025年度235億円へ減っています。現時点では、市場の期待よりも実際の減益を重く見る必要があります。
富士電機を候補に残すなら、自分が関わりたい事業と募集職種が結びつくかを、公式採用情報と照らし合わせてみましょう。専攻・経験との詳しい相性や配属の可能性は、会社の将来性とは分けて考えます。
出典:富士電機「2024年度通期決算」「2025年度通期決算」。事業区分の組み替えにより、公表資料間で過年度値が変わる場合があります。
中期計画|全社目標は達成圏、半導体は立て直し中
中期経営計画「熱く、高く、そして優しく2026」は、利益重視の経営と、エネルギー・インダストリー・半導体の成長を掲げています。全社目標にどこまで近づいたのか、最新の会社予想と比べてみましょう。
| 指標 | 2023年度実績 | 2026年度中期目標 | 2025年度実績 | 2026年度最新予想 | 判断 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 11,032 | 12,500 | 12,276 | 13,000 | 最新予想は中期目標を上回る |
| 営業利益 | 1,061 | 1,400 | 1,366 | 1,565 | 最新予想は中期目標を上回る |
| 営業利益率 | 9.6% | 11.2% | 11.1% | 12.0% | 11%超は前年度に達成 |
| 親会社株主に帰属する純利益 | 754 | 900 | 980 | 1,115 | 2025年度実績で中期目標を上回る |
電力機器、変電・電源、データセンター向けの生産能力を増やし、受注増を売上と利益につなげる計画です。第1四半期の受注高と利益を見ると、すでに成果が表れ始めています。
需要に合わせて設備投資を管理し、生産性が相対的に低いSi(シリコン)を縮小しながらSiCを拡大する方針です。ただし、2026年度の半導体営業利益は235億円から130億円への減益を見込んでおり、足元は回復よりも立て直しを優先する段階といえます。
また、全社目標を上回ったとしても、半導体の投資回収まで終わったことにはなりません。会社全体の好調さと、事業ごとに残る課題は分けて見ておきましょう。
- 電力・データセンター向け受注が計画どおり売上と利益につながる
- FA・器具の需要回復と価格改定が続く
- 半導体とSiCの採用拡大が営業利益の回復に表れる
- 大型案件の工期・採算・部材調達が悪化する
- 電動車向け需要の回復が遅れる
- 原材料高、中国市場の価格競争、半導体設備の低稼働が続く
出典:富士電機「2026年度中期経営計画」「2026年度経営計画」「2026年度第1四半期決算」
将来性評価|富士電機には将来性がある。根拠は電力・FAの収益基盤
ここまで確認した内容を、冒頭の5つの軸に戻して整理しました。以下は2026年8月29日時点の公開情報に基づく当サイトの見解であり、将来の業績を断定するものではありません。
| 評価軸 | 現時点の評価 | 判断根拠 |
|---|---|---|
| 全社の収益力 | 強い | 3期連続増収増益。2025年度の営業利益率は11.1% |
| 事業の利益源 | 強い | 2025年度の営業利益はエネルギー595億円、インダストリー444億円。2事業で全社利益を支える |
| 需要の持続性 | 強い | 2026年度第1四半期の営業利益はエネルギー84億円から121億円、インダストリー29億円から85億円へ増加 |
| 成長投資の回収 | 注意 | 半導体の営業利益は2024年度371億円から2025年度235億円へ減少。2026年度会社予想は130億円 |
| 中期計画の進捗 | 順調 | 2026年度会社予想は売上高1兆3,000億円、営業利益1,565億円で、いずれも中期目標を上回る |
富士電機をおすすめできるのは、次のような人です。
- 電力インフラ、変電・蓄電、データセンター電源を通じて、電力の安定供給に関わりたい人
- FAや産業システムを通じて、工場の省エネ・自動化、生産性向上に関わりたい人
- 一つの成長分野だけでなく、エネルギーとインダストリーを中心とした複数の収益源を重視する人
- 半導体の減益も理解したうえで、会社全体の収益力から長期的に判断したい人
ただし、半導体の営業利益は2024年度371億円から2025年度235億円へ減り、2026年度会社予想も130億円です。したがって、現時点で富士電機の将来性を支えているのは半導体の成長期待ではなく、エネルギーとインダストリーの収益力です。半導体だけを志望理由にする人は、他社の利益動向とも比べてから決めたほうがよいでしょう。
最終判断|富士電機に入社したいか、他社も比べたいか
ここまで読んだ今の気持ちに近いものを、一つ選んでみましょう。「富士電機に入社したい」と思えた人は応募に向けた準備を始め、まだ迷っている人は、迷いの理由に合う比べ方を選べます。
電力・FAの収益基盤と、半導体の立て直し方針に納得できる
全社の収益力、エネルギーとインダストリーの伸び、半導体の減益を理解したうえで「ここで働きたい」と思えるなら、次は応募準備を始めましょう。
募集職種、自己分析、ES・面接、企業との接点のうち、今足りないものから準備しましょう。
富士電機への応募準備で足りないものを確認するまず募集職種を見たい方は、富士電機公式の新卒採用情報を確認してみてください。
現在の求人、仕事内容、勤務地、自分の経験が生かせるか、応募経路のうち、まだ分からないことを一つ整理しましょう。
富士電機への転職で分からないことを整理する富士電機は、キャリア採用ページで人材紹介会社経由の応募を案内しています。募集状況や条件は、富士電機公式のキャリア採用情報でも確認できます。
迷っている理由から、比較方法を選ぶ
迷っているのはパワー半導体でしょうか。それとも、電力・FAまで含めた会社全体でしょうか。比べたい内容によって、次に見る情報が変わります。
半導体事業の売上高、営業利益、直近の増減、設備投資を同じ軸で比べてみましょう。
富士電機と他の半導体関連企業を比べる会社全体を比べたいなら、まず比較する企業を一社決めます。その会社の公式決算を使い、売上と利益、利益を支える事業、需要、成長投資、中期計画の順に見比べると判断しやすくなります。
半導体の減益や大型案件の変動が気になる
電力・FAの好調よりも、半導体の減益、投資回収、大型案件の採算変動が気になるなら、無理に富士電機を候補へ残す必要はありません。何が合わなかったのかを、次の会社選びの基準にしましょう。
外した理由から次の半導体関連企業を選ぶ富士電機の現在地が分かれば十分
全社の収益力、事業ごとの強弱、半導体で今後見たい点、中期計画との差まで分かったなら、ここで読み終えて大丈夫です。
数値は、特記のない限り億円単位に四捨五入しています。事業区分の組み替えにより過年度のセグメント値が資料間で変わるため、3年表では2023年度を参考値としました。2026年度通期値は会社予想であり、実績ではありません。将来の業績や採用結果、希望事業への配属を保証するものでもありません。応募前には、富士電機公式の採用情報で最新条件を確認しましょう。
確認日:2026年8月29日。通期比較は2023~2025年度、最新進捗は2026年7月30日公表の2026年度第1四半期を使用しています。

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